Letter to Y on The exhibition Alberto Giacometti. National New Art Centre. Roppongi, Tokyo
Dear Y,
先日戦後の代表的な彫刻家、アルベルト ジャコメッティAlberto Giacometti (1901 - 1966) の多分本格的な初めての展覧会が、六本木の国立新 美術館NNACで開催中ですので、車で!行ってきました。旧青梅街道から井の頭通りを行き、 代々木公園から原宿へ出て、青山墓地の横を通り、 無事帰りました。
これは素晴らしい展示ですので、9月までですので、機会がありま したらご覧ください。NNACも今年で10周年、早いものです。
4人で、モネ展、モジリアニ展を見ましたが、覚えていますか 。
GIACOMETTIはスイス生まれで、パリで制作をつづけ、戦 後の多くの芸術家、詩人と交流し、自らも幾たびも、制作を変遷し 続け、日本の哲学者、矢内原伊作と友情を保ち、その像も作り、 徹底的なデッサンは一枚に数日かかり、少しでもポーズを動かすと 、ものすごい驚きを示したそうです。
「実態を映すことはできない」「すべては試みだ」として、ひたす らデッサンと制作に打ち込んだようです。
来年1月には、東宝シネマシャンテで「Final Portrait」という伝記的な映画が来るようです。
私がGIACOMETTIに興味を持ったのは、1970年代初め で、私は20代半ば、高校の教師の先輩の同僚だった藝大出の彫刻 家Sと会話したとき、私が、「彼の作品はなぜあんなにヒョロヒョロしているんだろう」 というと、彼は即座に「よく見てごらん、彼はまさしくロダンの直 系だよ、あの強さとタッチは」と私にその本質を教えてくれました 。
S先生は40代半ばで、毎年銀座で個展を開き、 その頃はひたすら、クジャクの絵を描き続けていました。二人で、 国立近代美術館に行ったとき、佐伯祐三の有名なリュクサンブール 公園の絵を私が初めて見て、「わあ、すばらしいな」 とか言ったとき、先生は「でもよく見てご覧、 彼は下地をちゃんと作ってないから、画面にひびが入っているだろ う、それから、この並木の真ん中の空のヴァルール(色価) がおかしいので、空が並木より前面に飛び出しているだろう」 と教えてくれました。ドイツ中世絵画の素晴らしさや、 イタリアの抽象画の魅力や、アメリカの具象画の新しい伝統など無 数のことを教えてくれました。今からもう40数年前です。 鉄線描(てっせんびょう)という極細のまっすぐな線を引く日本画 の伝統をその展覧会の作品で教えてくれたりもしました。シルクロ ードや唐招提寺の壁画で有名になった平山郁夫の同期で、「彼の( 若かった)あの頃の絵は幻想的で素晴らしかった」と言っていまし た。上野動物園の動物を幻想的に描いたりしていたそうです。
S先生は40代半ばで、毎年銀座で個展を開き、
S先生は、絵にはきびしかったが、私に良くしてくれて、美術室 によく行くとコーヒーを入れてくれて、学期末には学生の作品を壁 に並べて、採点していましたが、私が行くと、採点してくれない、とか真顔で言っていました。 それでゆっくりとコーヒーを飲んで、職員室に行くと、「もう少しで採点が終わります」とか言って、担任に何度も頭を下げてまわり 、また美術室に戻ると私と雑談ばかりをしていました。先生も私が 教員をやめてまもなく、やはりやめて、絵に専念しました。 一時は私の胸像を作ろうかなどと言って、何枚かスケッチをしまし たが、実現しませんでした。そのスケッチを私は持っていたのです が、なくしてしまったのは残念です。
哲学者矢内原伊作YANAIHARA Isaku (1918 - 1989)についてもいろいろありますが、それはまた。
お元気でお過ごしください。
With best regards,
26 July 2017
26 July 2017
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