Thursday 12 March 2015

Under the cherry, To KANEKO Yutaka

花の下で
- 金子豊にささぐ -

春になったら花を見に行こうと
いつもおもっていた

一人なら夕暮れに、二人なら午後
三人以上なら昼近い食事のときに
花の下を歩き、過ぎて来た日々への
ひとときの安堵のおもいに満たされて
過ごそうではないか
そうおもっていた

みずからに、あるいはやさしい人に、あるいは
あかるい会話の人々に、きょうの
私のおもいは
たぶん共有されている

ありがとう、今日、ここに来ることができて
私がこんなふうに花を待っていたことを
私自身はじめて知った

おもえば
花はいつもそうだった
かなしませるのではなく
よろこびを与えるのでもなく
いまここにいる
今年もまた、会うことができたと
おもわせてくれる

亡き友だったら、きっとおなじように
ばかだな、おまえは
いつもそうだ
と言うだろうか

そうだ、ほんとうに
いつもそうだった
そうしたことを
今日はおもいだしている

ことばはもう必要なかった
とおい四月
花の下の日々から
ぼくらは出会い過ごした

あのなつかしい友に
もう一度
こんなことを
伝えたくて

at Kodaira                                              
12 March 2015
8 April 2015 Revised

31 March 2015 Kunitachi, Tokyo







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