拾遺詩篇
里行
RI Kohr
池
その夜は遅くまで
暗い明かりの下で話し続けた
過ぎて来た高原を 長く続く山すそを
越えて来た山々を そしてあの奇跡のようなひとつの池を
明日になればみな下山し また日常がはじまる 追憶は
都市の微塵の中に消えるだろう
それでもなお
決して消え得ないものが
私たちのすべての未来を
彩っていた
今年
もはや一世代を超えたのちに
ふたたびその蒼い池をめざそうと
その宿のかつてはなかった売店に立ち止まると
はなやかな山のつかの間のにぎわいの中に
夏の花が広がっていた
Tokyo
1 September 2000
Sekinan Research Field of Language
No comments:
Post a Comment