Saturday, 28 June 2014

CHINO Eiichi and Prague / Tale, Print, 2012

ロシア語と言語学を教えてくれたCもはやく逝った。塔と橋のある古い都市をこよなく愛したC。彼が書き残したものの中に「カルパチアの月」というのがあった。

彼は記す、会議を終えてキエフを発し、カルパチアの山に月と教会を見て、ひたすら西へ向かい、スロバキア、モラビア、ボヘミアを過ぎ、ついに「黄金のプラハへと着いた」と。彼の青春であったプラハ。

あれほどの言語を自在に駆使しながら、彼からもうその逸話を聞くこともできない。新聞はその死を、小さな見出しで言語学の天才と報じた。

夕ぐれにはまだ時間があるのに、イルミネーションが灯り始めた。雨がこまかく降っている。M百貨店も右手前方にあかるく光っている。

―帰りにコーヒーを飲んでいかない?

手前の新しいそうな店を見ながら、Iが言った。


Source: http://srfltheory.weebly.com/tale.html 

Reference:
CHINO Eiichi and Golden Prague / 28 June 2014



Mitsukoshi Department Store, Nihonbashi, Tokyo










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