Monday, 30 June 2014

The eve of festival

From Print 2012, Chapter 5

車と人がしだいに増えてきた。

中心街へ入ってくると、点灯した車のライトがまぶしい。建物が高くなってきた。ふたりの頭上には、赤と紺の地に金で縁取りされた小旗が歩道に沿って飾りつけられ、それがずっと先まで続いている。

―祝祭の前夜のようだね。

何に対しての前夜だったのか、自分がその中にいるとおもった日々が、かつてたしかにあった。

―前夜?

―そう、前の日の夜。

―クリスマスのような。

―そんなすてきなものじゃなかった。でもきっと、なにかを待っていたんだろうね、自分なりに。

―なにを待っていたの?

Iの髪に車の光が移って行く。

―もうよくおもいだせないけど、たぶん、やすらかな自分なのかな、へんな言い方だね。

―そんなことないけど、それはおとずれたの?

―来なかった、たぶん。
 祝祭はついに来なかったのかと、Iに言われておもった。

 こまかな雨が行く人の肩をぬらしている。

―それでもきっとなんとかなったんだね。こ
     うしているから。

いつからか祝祭を待つおもいは消えた。あるいは祝祭も前夜も、知らぬ間に過ぎて行ったのかもしれない。


Source: Tale / Print by LI Koh / 27 January 2012  

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